口の中が、まるで唐辛子を食べた後のように、ヒリヒリ、ピリピリと痛む。見た目には明らかな口内炎や傷があるわけでもないのに、舌や歯茎、頬の内側が常に灼けるような感覚に悩まされる。そんな不快な症状が続く場合、その背景には様々な原因が隠されている可能性があります。最も考えられる原因の一つが、「ドライマウス(口腔乾燥症)」です。唾液には、口の中の粘膜を潤し、保護する重要な役割があります。しかし、ストレスや薬の副作用、加齢などによって唾液の分泌が減少し、口の中が乾燥すると、粘膜は非常にデリケートで傷つきやすい状態になります。この無防備な粘膜に、食べ物や歯ブラシなどのわずかな刺激が加わるだけで、ヒリヒリとした痛みとして感じられてしまうのです。また、口の中に存在する「金属」が原因となっていることもあります。過去に治療した銀歯などの歯科金属が、唾液によってわずかに溶け出し、金属アレルギーを引き起こしている場合です。この場合、ヒリヒリ感だけでなく、口内炎や舌の荒れ、味覚異常などを伴うこともあります。さらに、特定の栄養素の不足も、口の中の痛みを引き起こすことがあります。特に、皮膚や粘膜の健康を維持するために不可欠な、ビタミンB群や鉄、亜鉛などが欠乏すると、舌の表面が赤くつるつるになったり、炎症を起こしたりして、ヒリヒリとした痛みを感じやすくなります。そして、これらの明らかな原因が見つからないにもかかわらず、強い灼熱感が長期間続く場合は、「バーニングマウス症候群(口腔灼熱症候群)」という病気の可能性も考えられます。これは、見た目には全く異常がないのに、舌を中心に激しい痛みを感じる、原因不明の病気です。このように、口の中のヒリヒリ感は、単純な口内炎から、全身の状態を反映するものまで、実に多様な原因によって引き起こされます。自己判断で放置せず、まずは歯科や口腔外科を受診し、その原因を正しく突き止めることが、つらい症状から解放されるための第一歩となるでしょう。
口の中のヒリヒリ感。それは一体何が原因なの?