日中は全く問題ないのに、朝起きると、決まって頬の内側や舌に、噛んだような跡や痛みがある。そんな症状に悩まされている方は、寝ている間に、無意識のうちに歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)を行い、その際に口の中の粘膜を噛んでしまっている可能性があります。睡眠中の歯ぎしりや食いしばりは、自分ではコントロールすることができない、非常に厄介な癖です。日中に比べて、何倍もの強い力が歯や顎にかかるため、歯がすり減ったり、欠けたりするだけでなく、頬や舌の筋肉にも過剰な緊張をもたらします。この強い力で歯をギリギリとこすり合わせる過程で、頬の粘膜を巻き込んでしまったり、食いしばりの際に舌の縁を歯に押し付けて、傷を作ってしまったりするのです。この、睡眠中の無意識の自傷行為から、あなたの口の中を守ってくれるのが、「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースです。ナイトガードは、主に就寝中に、上の歯、あるいは下の歯に装着する、透明なプラスチック製の装置です。これを装着することで、いくつかの重要な効果が得られます。まず、ナイトガードが歯と歯の間に介在することで、上下の歯が直接当たるのを防ぎ、歯ぎしりによる歯の摩耗や破損を防止します。そして、これが粘膜を噛む人にとって最も重要なのですが、ナイトガードには適度な厚みがあるため、上下の歯の間にスペースが生まれます。これにより、頬の粘膜や舌が、歯の間に挟まり込むのを物理的にブロックしてくれるのです。また、ナイトガードの滑らかな表面の上で歯が滑るため、筋肉の異常な緊張を和らげ、顎関節への負担を軽減する効果も期待できます。ナイトガードは、スポーツ用品店などで市販されているものもありますが、自分の歯並びに合っていないものを使うと、かえって噛み合わせを悪化させる危険性があります。最も安全で効果的なのは、歯科医院で自分の歯型を精密に採って作製してもらう、オーダーメイドのナイトガードです。保険適用で作製できる場合も多いので、朝起きた時の口の中の痛みに心当たりがある方は、ぜひ一度、歯科医師に相談してみてください。