長引くマスク生活によって、これまで肌トラブルとは無縁だった人までもが、口の周りの肌荒れに悩まされるようになりました。なぜマスクを着けていると、口周りは荒れやすくなってしまうのでしょうか。その原因は一つではなく、三つの大きな要因が複合的に関わっています。第一の要因は「摩擦」です。マスクの着脱時や、会話で口を動かすたびに、マスクの繊維が肌の表面をこすります。この絶え間ない物理的な刺激が、皮膚の最も外側にある角質層を傷つけ、肌のバリア機能を低下させてしまうのです。バリア機能が弱まった肌は、少しの刺激にも敏感に反応し、赤みやかゆみを引き起こしやすくなります。第二の要因は「蒸れ」です。マスクの内部は、自分の呼気に含まれる水分で、常に高温多湿の状態になっています。この環境は、アクネ菌や雑菌が繁殖するのに最適な条件です。そのため、ニキビや吹き出物ができやすくなります。また、汗や皮脂も排出されにくくなり、毛穴詰まりの原因にもなります。第三の要因は、マスクを外した後の「急激な乾燥」です。マスクで蒸れていた肌は、水分で潤っているように感じますが、実は角質層がふやけて、非常に無防備な状態になっています。その状態でマスクを外すと、肌表面の水分が一気に蒸発します。その際、肌がもともと持っていた潤いまで一緒に奪われてしまう「過乾燥」という状態に陥り、カサつきや粉吹きを引き起こすのです。この厄介なマスク肌荒れを防ぐためには、まず、肌への刺激が少ない、シルクやコットンなどの天然素材のマスクや、立体構造で肌との接触面が少ないマスクを選ぶことが有効です。また、汗をかいたら、こまめにティッシュで優しく押さえるように拭き取りましょう。そして、何よりも大切なのが、帰宅後のスキンケアです。低刺激性の洗顔料で優しく汚れを落とした後、セラミドやヒアルロン酸などの高保湿成分が配合された化粧水やクリームで、徹底的に保湿を行い、低下したバリア機能を補ってあげることが、マスクに負けない肌を作るための鍵となります。