口の中に痛くないしこりを見つけた時、誰もが最も心配するのは「これが悪性のものではないか」ということでしょう。もちろん、最終的な診断は専門家による精密な検査でなければ下せませんが、良性のしこりと悪性のしこり(がん)には、いくつかの一般的な傾向の違いがあります。これを知っておくことは、過度に心配しすぎないため、あるいは危険なサインを見逃さないために役立ちます。まず、良性のしこりの多くは、その「境界が明瞭」で、「可動性がある」ことが特徴です。しこりの輪郭がはっきりとしていて、指で触るとコロコロと動くような感じがします。表面は、周りの正常な粘膜と同じように滑らかで、色はピンク色や、やや白っぽい色をしています。成長のスピードも非常にゆっくりで、何年も大きさが変わらないことも珍しくありません。代表的な良性腫瘍である線維腫や乳頭腫、あるいは粘液嚢胞などがこれにあたります。一方、悪性のしこり、つまり口腔がんの場合は、異なる特徴を示します。最も注意すべきなのは、「境界が不明瞭」で、「周囲の組織に固着している」ことです。しこりの輪郭がぼんやりとしていて、指で動かそうとしても、がっちりと根を張ったように動きません。また、しこりの「表面がただれている(潰瘍を形成している)」ことも、非常に重要なサインです。普通の口内炎のように見えても、中心部が深くえぐれていたり、硬いしこりを伴っていたりします。成長スピードも比較的早く、数週間から数ヶ月の単位で、じわじわと大きくなっていく傾向があります。色は、赤みを帯びていたり、白っぽくなっていたり、あるいは赤と白が混ざっていたりと、様々です。ただし、これらはあくまで一般的な傾向に過ぎません。初期のがんの中には、良性のしこりと見分けがつきにくいものもたくさんあります。そして、最も重要なことは、良性か悪性かにかかわらず、「痛みがない」ことは共通している場合が多いという点です。自己判断は絶対にせず、これらの特徴を参考にしつつも、必ず専門医の診察を受けるようにしてください。
良性のしこりと悪性のしこり。見分けるポイントは?