社会人になって数年が経った頃から、私は朝起きた時の口の中の不快感に悩まされるようになりました。まるで口の中に薄い膜が張ったような、ネバネバとした感覚。そして、自分でも気になるほどの口臭。最初は、前日の夜に食べたものや、疲れが原因だろうと思っていました。歯磨きをすれば一時的にはスッキリしますが、夕方になるとまたネバつきが戻ってくるのです。市販の洗口液を使ってみたり、ガムを噛んでみたりしましたが、根本的な解決には至りませんでした。特に、人と近くで話す仕事が多かったため、自分の口臭が相手に不快な思いをさせているのではないかと、常にビクビクしていました。会話中に無意識に手で口元を覆うのが癖になり、だんだんと人とのコミュニケーション自体が億劫になっていきました。このままではいけない。そう思い、私は意を決して歯科医院の門を叩きました。一通りの検査を終えた後、歯科医師から告げられたのは、自分でも薄々感じていた「歯周病」という診断でした。歯と歯茎の間に、歯周ポケットと呼ばれる深い溝ができており、そこに大量の歯垢や歯石が溜まっているとのこと。口のネバネバは、そこで繁殖した歯周病菌が出す毒素や、炎症によるものだったのです。ショックでしたが、同時に原因がはっきりしたことに少し安堵しました。その日から、私の本格的な歯周病治療が始まりました。数回にわたる歯石除去と、歯科衛生士さんによる徹底的なブラッシング指導。特に、歯間ブラシとデンタルフロスの使い方は、今までの自分のやり方がいかに間違っていたかを痛感させられるものでした。治療を続け、教わった通りのセルフケアを毎日実践するうちに、私の口の中は劇的に変わっていきました。あれほど私を悩ませていた朝のネバネバ感が、嘘のように消え去ったのです。口の中がさっぱりとし、口臭も気にならなくなりました。あの時、勇気を出して歯医者に行って本当に良かった。口の不快感から解放された今、私は心からそう思っています。