歯茎や、上顎の真ん中あたりを舌で触ってみると、骨のように硬い、こぶのような盛り上がりがある。押してみても痛みはなく、昔からそこにあるような気もする。そんなしこりの正体は、「骨隆起(こつりゅうき)」である可能性が高いです。骨隆起とは、その名の通り、顎の骨が部分的に、異常に発育して盛り上がった状態を指します。これは、病的な腫瘍などではなく、骨そのものが過剰に発育したもので、決して悪性化するようなものではありません。骨隆起ができる原因は、まだ完全には解明されていませんが、遺伝的な要因や、歯ぎしりや食いしばりなど、噛み合わせの力が過剰に顎の骨にかかり続けることが、その成長を促すのではないかと考えられています。発生する場所によって呼び名が異なり、下の歯の内側の歯茎にできるものを「下顎隆起(かがくりゅうき)」、上顎の天井の真ん中にできるものを「口蓋隆起(こうがいりゅうき)」と呼びます。多くの場合は、自覚症状がなく、歯科検診などで歯科医師に指摘されて初めてその存在に気づくケースがほとんどです。痛みもないため、基本的には治療の必要はなく、そのまま経過観察となることが大半です。しかし、いくつかのケースでは、この骨隆起が問題となることがあります。例えば、入れ歯(義歯)を作る際に、この骨の出っ張りが邪魔になって、安定した入れ歯が作れなかったり、装着時に痛みを感じたりすることがあります。また、隆起した部分の粘膜は、骨に張り付いていて薄いため、硬い食べ物が当たった時などに傷つきやすく、口内炎ができやすいという人もいます。さらに、極端に大きくなると、発音がしにくくなったり、食事の際に違和感を覚えたりすることもあります。このように、日常生活に支障をきたす場合には、外科的に骨の盛り上がりを削り取って平らにする手術(骨隆起除去術)が行われます。もし、あなたの口の中に硬いしこりがあり、それが骨隆起かもしれないと気になったら、一度歯科医院で診てもらい、それが本当に問題のないものなのか、そして自分の場合は放置しておいて良いのかどうかを確認してもらうと、より安心して過ごせるでしょう。