年齢を重ねるにつれて、以前よりも口の中がネバネバしたり、乾きやすくなったりしたと感じる方は少なくありません。これは、単に「歳のせい」と片付けてしまいがちですが、その背景には、加齢に伴ういくつかの身体的な変化が関係しています。これらの理由を理解し、適切な対策を講じることで、不快な症状を改善し、健康な口内環境を保つことが可能です。まず、加齢による最も大きな変化の一つが、「唾液腺の機能低下」です。長年にわたって働き続けてきた唾液腺も、年齢とともにその組織が萎縮し、唾液を分泌する能力が少しずつ低下していきます。これにより、唾液の絶対量が減少し、口の中が乾燥しやすくなります。また、口の周りの筋肉、いわゆる「口輪筋」の衰えも、口のネバネバに大きく関わっています。筋力が低下すると、無意識のうちに口がぽかんと開いた状態になりやすく、口呼吸の原因となります。これにより、口の中の水分が蒸発し、乾燥とネバつきを引き起こすのです。さらに、高齢になると、何らかの持病を抱え、日常的に薬を服用している人が増えます。高血圧や心臓病、糖尿病などの治療薬の中には、副作用として唾液の分泌を抑制するものが多く、これが口の乾燥やネバつきを助長する大きな要因となっています。対策としては、まず「保湿」と「唾液分泌の促進」が鍵となります。こまめな水分補給を心がけるとともに、保湿成分の入った洗口液や、口腔保湿ジェル、スプレーなどを活用して、口の中の潤いを保ちましょう。また、食事の際には、よく噛むことを意識し、ガムを噛んだり、唾液腺マッサージを行ったりして、唾液の分泌を促すことが有効です。口周りの筋肉を鍛える「あいうべ体操」などのエクササイズも、口呼吸の改善に役立ちます。加齢による変化は避けられない部分もありますが、日々のセルフケアを工夫することで、口のネバネバという不快感と上手に付き合い、快適な生活を送ることは十分に可能なのです。
加齢とともに増える口のネバネバ、その理由と対策