口の中の粘膜がヒリヒリと痛んだり、舌が赤く腫れぼったくなったり、口内炎が繰り返しできたり。そんな不快な症状は、あなたの体が「栄養不足」に陥っていることを知らせる、SOSサインかもしれません。特に、皮膚や粘膜の健康を維持するために重要な役割を担っている、いくつかの栄養素が不足すると、口の中に症状が現れやすくなります。まず、最も関係が深いのが「ビタミンB群」です。ビタミンB群は、エネルギー代謝を助け、細胞の新陳代謝を促す働きがあります。中でも、「ビタミンB2」は、皮膚や粘膜の保護に不可欠で、「発育のビタミン」とも呼ばれます。これが不足すると、細胞の再生がうまくいかなくなり、特に新陳代謝が活発な口の中の粘膜に異常をきたしやすくなります。口角炎や口内炎、舌が炎症を起こす舌炎などが、その典型的な症状です。また、「ビタミンB6」はタンパク質の代謝に関わり、「ビタミンB12」や「葉酸」は、正常な血液を作るために必要で、不足すると貧血になり、舌の痛み(ハンター舌炎)などを引き起こすことがあります。次に、重要なのが「鉄分」です。鉄分が不足して起こる鉄欠乏性貧血でも、舌の表面の乳頭が萎縮してツルツルになり、食べ物がしみたり、ヒリヒリと痛んだりする「舌炎」が起こることがあります。味覚異常や、食べ物が飲み込みにくくなる嚥下障害を伴うこともあります。さらに、「亜鉛」も、味覚を感じる細胞(味蕾)の新陳代謝や、皮膚や粘膜の健康維持に欠かせないミネラルです。亜鉛が不足すると、味覚障害が起こったり、口の中が荒れてヒリヒリしたり、傷の治りが遅くなったりします。これらの栄養素は、互いに協力し合って働くため、特定の何かだけを摂取するのではなく、バランス良く摂ることが大切です。もし、口の中のヒリヒリが続くようであれば、一度、ご自身の食生活を見直してみてください。偏った食事や無理なダイエットは、口の中の健康を損なう原因となります。バランスの取れた食事は、口の中の不快な症状を改善するための、最も基本的で重要な治療法なのです。