口のネバネバや乾きが気になるけれど、歯周病などの病気は見当たらない。そんな時、意外な原因として考えられるのが、日常的に服用している「薬の副作用」です。薬は病気を治したり、症状を緩和したりするために不可欠なものですが、その中には、副作用として唾液の分泌を抑制してしまうものが数多く存在します。唾液の分泌量が減ると、口の中の自浄作用が低下し、細菌が繁殖しやすくなるため、口がネバネバしたり、乾いたり、口臭が強くなったりするのです。これを「薬剤性ドライマウス」と呼びます。唾液の分泌を抑制する副作用を持つ薬は、実に様々な種類に及びます。例えば、アレルギー症状を抑える「抗ヒスタミン薬」、血圧を下げる「降圧薬(利尿薬など)」、うつ病の治療に用いられる「抗うつ薬」、精神を安定させる「抗不安薬」、パーキンソン病の薬、咳止め、そして痛み止めの一部など、その数は数百種類にものぼると言われています。特に、複数の薬を服用している高齢者の方は、副作用が重なり合って現れやすく、ドライマウスのリスクが高まる傾向にあります。もし、新しい薬を飲み始めてから、あるいは薬の量が変わってから、口のネバネバが気になり始めたという場合は、その薬が原因である可能性を疑ってみるべきです。ただし、自己判断で勝手に薬の服用を中止するのは絶対にやめてください。まずは、その薬を処方してくれた医師や、かかりつけの歯科医師、あるいは薬局の薬剤師に相談することが重要です。症状を伝えることで、副作用の少ない別の薬に変更してもらえたり、唾液の分泌を促す薬を処方してもらえたり、あるいは保湿ジェルなどの対症療法を提案してもらえたりする場合があります。薬の副作用は、ある程度仕方のない部分もありますが、その不快な症状を和らげるための方法は存在します。一人で悩まず、専門家に相談することが、快適な毎日を取り戻すための第一歩です。
そのネバネバ、薬の副作用ではありませんか?