今回は、重症化した虫歯や歯周病で「歯がボロボロ」になってしまった患者さんを専門的に受け入れている、都内歯科クリニックの院長にお話を伺いました。先生の元には、10年以上も歯医者を避けてきたという方や、恥ずかしさからマスクを2重にして来院される方が絶えないと言います。まず先生が強調されたのは「恥ずかしいという感情は、患者さんの責任ではない」という点です。多くの患者さんは、過去に歯科医師から心ない言葉をかけられたり、厳しい叱責を受けたりしたことがトラウマとなっており、それが受診を遠ざける最大の原因になっていると指摘します。そのため、こちらのクリニックでは初診の際、いきなり診療台に座らせることはしません。まずは私服のままカウンセリングルームでじっくりとお話を伺い、患者さんが抱えている不安や、なぜここまで放置してしまったのかという背景を共有することから始めます。「歯科医師は患者さんをジャッジする立場ではなく、健康を取り戻すためのガイドです」と先生は語ります。実際に口の中を拝見する際も、驚いたり声を荒らげたりすることは一切ありません。むしろ、深刻であればあるほど、プロとしての知的好奇心と使命感が燃え上がると言います。最近の傾向として、40代から50代の働き盛り世代が、時間がないことと恥ずかしさを理由に放置し、いよいよ噛めなくなってから駆け込んでくるケースが多いそうです。そうした方々に対して、先生は最短期間で社会復帰できるよう、集中治療や眠ったまま治療を受けられる静脈内鎮静法などを提案しています。「歯がボロボロであることを、自分のダメな部分だと思い込まないでください。それは単にケアの方法やタイミングが合わなかっただけのことです。私たちが全力でリセットのお手伝いをします」という先生の温かいメッセージは、今まさに暗闇の中で悩んでいる人にとって、一筋の光となることでしょう。歯科治療は、失われた尊厳を取り戻すためのプロセスでもあります。専門家の手に委ねることで、恥ずかしさは消え、新しい人生の扉が開くことを、先生の治療を受けた多くの患者さんたちの笑顔が証明しています。