鏡を見るたびに気になってしまう下顎の突出、いわゆる「しゃくれ」。コンプレックスとして長年悩んでいる方も多い症状ですが、一口にしゃくれと言っても、その原因や状態は人によって千差万別です。効果的に治すためには、まず自分のしゃくれがどのようなタイプに分類されるのかを正しく理解することから始めなければなりません。原因を誤解したまま間違った対処をしてしまうと、効果が出ないどころか、かえって症状を悪化させてしまうリスクさえあります。ここでは、しゃくれの根本的なメカニズムと分類について詳しく解説していきます。まず大きく分けると、しゃくれには「骨格性」のものと「歯性(歯槽性)」のもの、そして「機能性」のものの3つのタイプが存在します。最も治療が難しく、かつ見た目への影響が大きいのが「骨格性下顎前突」です。これは文字通り、下顎の骨そのものが過剰に成長してしまったり、上顎の骨の成長が不十分で小さすぎたりすることで、相対的に下顎が前に出てしまっている状態を指します。遺伝的な要因が強く関わっていることが多く、親や親族に受け口の方がいる場合、骨格性の傾向を受け継ぐ可能性が高くなります。このタイプの特徴は、横顔を見た時に下顎全体が長く、しゃもじのように前に突き出している点です。骨自体の大きさや位置の問題であるため、歯の角度を変えるだけの治療では限界があり、根本的な解決には外科的なアプローチが必要になることが多いのが現実です。次に「歯性反対咬合」と呼ばれるタイプです。これは骨格の大きさや位置には大きな問題がないものの、歯の生え方や傾きに原因があるケースです。具体的には、上の前歯が内側に倒れ込んでいたり、下の前歯が外側に傾いて生えていたりすることで、噛み合わせた時に下の歯が上の歯よりも前に出てしまっている状態です。このタイプは、骨格的なズレが少ないため、比較的治療のハードルは低くなります。ワイヤーやマウスピースを用いた一般的な歯列矯正によって、歯の傾きを正常な位置に戻すことで、劇的に改善する可能性が高いでしょう。「しゃくれ=手術」と思い込んでいる方の中にも、実は検査をしてみるとこの歯性タイプであり、矯正治療だけで美しい横顔を手に入れられるケースは少なくありません。そして見落とされがちなのが「機能性反対咬合」です。これは、骨や歯並びにはそれほど大きな問題がないにもかかわらず、噛み合わせる際の癖や筋肉のバランスによって、下顎を前に突き出して噛んでしまっている状態です。例えば、早期接触といって、口を閉じる途中で一部の歯がぶつかり、それを避けるために無意識に顎を前にスライドさせて噛む癖がついている場合などが該当します。また、舌の位置が低く、常に下の前歯を裏側から押しているような悪習癖がある場合も、この機能的なしゃくれを引き起こします。このタイプであれば、噛み合わせの調整や、口腔周囲筋のトレーニング(MFT)を行うことで、比較的早期に改善が見込めることがあります。
しゃくれの原因を見極めることが治療への第一歩